【新人技師向け】消化管造影で手際が悪いと言われないための『体位変換』4つのコツ

私が診療放射線技師(以下、RT)を目指していた学生時代、幸運にも学校の恩師が「上部消化管造影のスペシャリスト」という素晴らしい方でした。その先生の流れるような美しい検査技術に魅了されたことが、私が消化管造影の世界にのめり込む原点となりました。

しかし、いざ自分が国家試験に合格し、現場に出てみると現実は甘くありません。上部消化管(胃透視)や注腸検査の現場で、多くの新人技師が最初に大きな壁としてぶつかるのが「患者さんの体位変換」です。

頭では手順を分かっているつもりでも、いざ透視室に入ると「手際が悪い」と先輩から注意されて凹んだり、パニックになって次の指示が出てこなくなったり……。あなたもそんな経験はありませんか?

今回は、スペシャリストの恩師から学び、私自身が数々の現場で実践してきた「患者さんも自分も楽になる、スムーズな体位変換のコツ」を分かりやすく伝授します。

なぜ新人は消化管造影の「体位変換」で手際が悪くなってしまうのか?

上部消化管造影を始めたばかりの時は、頭では撮影順序がしっかり分かっているつもりでも、いざ本番になると「あれ、次は何のポーズだっけ……?」と一瞬フリーズしてしまう。そんな経験が、誰しも一度はあるのではないでしょうか。

「手際が悪い」と言われてしまう新人の多くは、技術がないのではなく、頭の知識と現場の動きがまだリンクしていないだけなのです。

撮影順序や体位変換の段取りは、机の上でマニュアルをただ読んでいるだけでは、なかなか身体に染み込んできません。文字を見るだけで覚えられるほど、現場は甘くありませんよね。

そこでおすすめしたいのが、「透視装置が空いている時間を見つけて、実際に装置を動かし、自分の声を出して、身体で覚える」という泥臭い特訓です。

「次は仰臥位、右回りで……」と自分で声に出しながら機械を動かし、患者さんの動きをイメージする。この自主トレを繰り返すことで、本番でパニックにならず、流れるような手際が自然と身についていきます。

教科書には載っていない!スムーズな体位変換を極める「4つの鉄則」

ここで、ちょっと想像してみてください。
普段の胸部X線写真を撮影する際、患者さんに全く手を触れずに正しい体位をとっていただくことはできますか? おそらく、かなり難しいはずです。

しかし上部消化管造影検査では、その何百倍もの複雑な体位変換を、「声(指示)だけ」で行っているのです。
そう考えると、最初から上手くいくはずがありませんよね。

声だけで患者さんに迷わず動いてもらい、流れるような手際を実現するための「4つの鉄則」を伝授します。

鉄則1:指示を出す「言葉の引き出し」をたくさん持つ

患者さんへの指示で、ただ「右を向いて」「左を向いて」を繰り返していませんか? 高齢の患者さんほど、パッと左右が分からなくなることがあります。

デキる先輩技師の言葉をよく観察してみてください。左右だけでなく、さまざまな表現を使っているはずです。

・「壁側(窓側)を向いてください」
・「あちら(撮影室内のスピーカーの位置など)を向いてください」
・「私の方(反対側)を向いてください」

同じ指示でも、患者さんによって伝わりやすい言葉は違います。先輩方のいろんな表現を、どうぞどんどん盗んで自分の引き出しを増やしてください。

鉄則2:患者さんが逆に動いても「否定」しない

もし、患者さんがあなたの指示とは逆に動いてしまったとき、どう声をかけますか?
ここで「違います!」「逆、逆!」と強い言葉で訂正しようとするのは絶対にNGです。患者さんは「間違えてしまった」と萎縮してしまい、余計にスムーズに動けなくなってしまいます。

そんなときは、このように声をかけてみてください。
「はい、そこで一度止まってくださいね!……では、次は反対側を向いてみましょうか」

このように伝えると、患者さんは「間違えた」のではなく、「新しい指示が出たのだ」と思って安心して次の動きに入ってくれます。患者さんの心を傷つけない、プロのテクニックです。

鉄則3:【重要】放射線技師は「予言者」であれ!

患者さんは検査が始まるとき、「これからどんなことをされるんだろう……」と大きな不安や恐怖を抱えています。そこで私は、若い頃から「放射線技師は予言者であれ」という意識を強く持って検査に臨んしてきました。

これから患者さんの身に起こるであろう変化を、少しだけ先回りして「予言」してあげるのです。

・「今から発泡剤を飲むと、少ししてゲップがしたくなります。そのときは肩の力をフッと抜くと、自然と治まりますよ」
・「これから頭のほうが少し下がりますが、肩当てがしっかり支えますから、手に力を入れなくても絶対に落ちたりしませんよ。安心してくださいね」

こうして事前に伝えておき、実際にその通りのことが起きると、患者さんは「あ、この技師さんの言う通りだ。この人は信頼できる!」と、あなたに絶大な安心感を寄せてくれるようになります。

検査中にこの「予言と安心」を細かく繰り返していくことで、患者さんとの間に強い信頼関係が生まれ、こちらの指示にも驚くほどスムーズに動いてくれるようになります。そして何より、検査が終わったあとに「今日、この先生の検査を受けて本当に良かった」と、心から満足していただけるのです。

鉄則4:「褒め言葉」を連発して味方につける

それからもう一つ、とても大切なのが「患者さんの動きを褒めること」です。

自分の動き方が良いと褒められて、悪い気分になる人はいません。
「はい、いいですね!」「完璧です!」と声をかけながら、患者さんに気持ちよく体位変換してもらいましょう。検査がスムーズに進むだけでなく、透視室全体の雰囲気も驚くほど良くなりますよ。

失敗は誰でもある。上部消化管・注腸検査を「得意」に変えるための勉強法

上部消化管・注腸検査の勉強をするとき、教科書やマニュアルの「綺麗な画像」ばかりを見ていませんか?

実は、そこに大きな落とし穴があります。教科書の画像ばかり見ていると、「胃や腸の形はこういうものんだ」と頭が固くなってしまいがちです。そのため、現場で教科書に出てこないようなイレギュラーな形に出くわした瞬間、頭が真っ白になって思考が停止してしまうのです。

人間の体は十人十色。マニュアル通りの形をした患者さんばかりではありません。この「思考停止」を乗り越えて、検査を『得意』に変えるための方法をお話しします。

研究会や勉強会で、自分の「キャパシティ」を広げる

教科書以外のリアルな臨床に触れるために、ぜひ地域の研究会や勉強会へ積極的に足を運んでみてください。

そこには、教科書には絶対に載っていないような「イレギュラーな症例」が山ほど転がっています。「こんな症例もあるのか」と知っておくだけで、現場で予想外の形に出会いしたとき、焦らずに対応できる自分のキャパシティ(器)が広がります。私は若い頃、仕事終わりに1時間かけてでも勉強会に通い詰めていました。そこでの学びが、私を大きく成長させてくれたのです。

撮影と読影は「表裏一体」である

勉強会に参加すると、「読影(画像から病変を読み解くこと)」がメインになると思います。
よく現場では、「放射線技師に読影なんて必要ない。言われた通りに撮影すればいいんだ」と言う人がいますが、私はそうは思いません。

私の持論は、「読影ができなければ撮影はできない。実して、撮影ができなければ読影はできない」です。

どこに病変がありそうか、この影はどういう意味なのか(読影の視点)が分かっていなければ、それを的確に捉えるための最適な角度やタイミング(撮影の技術)は導き出せません。

勉強会でたくさんの症例をインプットし(読影を学び)、翌日の現場での撮影でアウトプットする。このサイクルを繰り返すことで、あなたの撮影レベルは劇的に向上し、そのたびに、消化管造影検査がどんどん「好き」になっていくはずです。

まとめ:技術が身につけば、放射線技師の仕事はもっと面白くなる!

もしかすると、私のこの意見に反論される放射線技師の方も大勢いらっしゃるかもしれません。しかし、多くの現場を渡り歩いてきたからこそ、私は確信を持っていえます。

消化管造影検査は、一般撮影やCT検査とは違います。マニュアル通りにボタンを押せば、誰がやっても全く同じ結果(画像)が出せるわけではありません。

なぜなら、消化管造影検査では、「撮る」と同時に、リアルタイムで「探す」という作業が行われているからです。

検査が終わってから、上がってきた画像を見て「病変はどこかな?」と探すのではありません。透視のモニターを見ながら、バリウムの薄い流れや、わずかな粘膜の凹凸の変化に全神経を集中させ、自分の手と声で患者さんを動かしながら、その手で病変を「探しにいく」のです。

だからこそ難しく、だからこそ、自分の技術が身につけば身につくほど、これほど面白い仕事はありません。

もし今、あなたが「毎日同じルーティンワークばかりで仕事がつまらない」「今の職場では消化管検査を極められる環境がない」「もっと技術を磨いてコメディカルのプロとして輝きたい」と悩んでいるなら、一度外の世界に目を向けてみるのも一つの手です。

「自分が次に得たいスキル」を明確にした転職は、あなたの価値を高める最高の投資になります。

まずは、世の中にどんな医療現場(求人)があるのかをスマホでポチポチと眺めてみることから始めてみませんか? あなたの「技術を磨きたい」という情熱を必要としている職場は、きっと見つかるはずです。

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